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13: 建物賃貸借・自殺・損害賠償責任
H28.12.25
賃貸マンションの賃借人が自殺した場合、賃借人には契約義務違反が生じます。
賃借人の建物保管義務として、心理的に嫌悪すべき事由(いわゆる心理的瑕疵)を発生させないようにする義務が含まれているからです。
当の本人は亡くなっているので、その責任は、賃借人の相続人ないし賃貸借契約の保証人らが負うこととなります。
相続人は、相続放棄によってその責任を免れることができますが、保証人は家主からの責任追及を逃れる術はありません。
ここでの損害額は、賃貸することができない期間の相当賃料額及び賃貸できたとしても賃料が下がる期間の下落額に、
それぞれの期間を乗算して決められます。例えば、次のような判例があります。「〇号室は、自殺事故から1年間賃貸できず、
その後賃貸するに当たっても従前賃料の半額の月額3万円での賃貸しかできず、他方で、賃貸不能期間(1年間)と一契約期間
(2年間)の経過後、すなわち自殺事故から3年後には、従前賃料の月額6万円での賃貸が可能になっていると推認するのが相当である。」
つまり、損害額は6×12+3×24=144万円と算定されるわけです。一見裁判官の主観に左右される恣意的判断と思われますが、
民事訴訟法248条は、こうした裁量権を裁判所に付与しているのです。他方、事業者(家主)は、
新たな入居者に対しては事故物件として事実を告知する義務があります。仮に、それを告知せずに後日真実が判明した場合は、
新たな賃借人から瑕疵担保責任等を追及される恐れがあります。ただし、自殺が告知事項となるのは、
自殺が発生した次の新規入居者に対してであり、その後の入居者に対しては告知義務はなくなるとされています。
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