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23: 肖像権侵害・不法行為
H29.4.16
最高裁判所において、被疑者の容貌、姿態を写真撮影したことが肖像権侵害として初めて民事上の問題となり、不法行為による損害賠償請求が認められたのが、
平成17年11月10日判決です。大手出版社が発行する写真週刊誌の記者が、勾留理由開示手続の法廷に小型カメラを隠して持ち込み、閉廷直後に、手錠をされ腰縄を付けられた状態にある被疑者の容貌
、姿態を無断で撮影したという事案です。判決は、「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する(刑事事件の被疑者、被告人も例外ではない)。」
とする一方、「人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もある」として、比較衡量する際の考慮要素(被撮影者の社会的地位・活動内容、撮影場所、撮影目的、撮影態様、撮影の必要性等)
を示したうえ、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものと言えるかどうかを判断して違法性の成否を決定すべきと判示しました。
上記最高裁の判断枠組みによれば、権利侵害の有無が形式的に判断されないという意味で、肖像に関する法的利益には絶対的な権利性があるとはいえない、と解されます。例えば、 運動会等の行事の写真を撮影する行為、私人が平穏な態様でスナップ写真を撮影する行為などは、社会生活上許された行為といえ、その写真に他人の容ぼう等が写り込んでいたとしても、 被撮影者の承諾がなければ不法行為が成立するものではありません。ただし、仮に撮影行為自体が違法でないとしても、それを公表するに際しては格別の配慮が必要と思われます。 |
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