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31: 破産法・支払不能・支払停止・受任通知
H29.9.16
破産法は、破産手続開始の原因として、支払不能を規定し、支払の停止を支払不能の推定事実としています。支払不能とは、
債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいい、
支払の停止とは、上記状態を外部に表示する債務者の行為をいいます。つまり、支払不能は債務者の客観的な財産状態をいうのに対し、支払の停止は債務者の主観に基づく行為ということになります。
債務整理を受任した代理人(弁護士等)は、債務整理開始通知(いわゆる受任通知)を債権者に送付します。債務者にとって受任通知の最大の効用は、 貸金業者の取立行為が禁止されることにあるとされています。すなわち、貸金業法は、債務者が弁護士等に債務の処理を委託し、その旨弁護士等から貸金業者に通知があった場合、 貸金業者に対し、弁済を要求するなどの取立行為を罰則付きで禁止しているからです。もっとも、貸金業者とは、貸金業務を行い、財務局または都道府県に登録している業者のことをいい、 具体的には消費者金融、クレジットカード会社(キャッシング取引)等を業とする者をいいます。銀行、信用金庫、労働金庫等も様々な融資を行っていますが、これらは貸金業者ではありません。 他方で、受任通知は、支払停止の一態様と解されます(最高裁平成24年10月19日判決)。そして、破産法によって、支払停止を基準点として新たな法律関係が形成されます。 @債権者に対しては、支払停止の事実を認識したとき以降に取得した債権・債務による相殺が禁止され、A債務者(破産予定者)に対しては、支払停止後の無償取引行為等は、 偏頗弁済として管財人から否認されるなどの厳しい規律が課されています。 受任通知が支払停止の一態様と解され、支払停止を基準点とする法的効果の波及という事情をふまえて、受任通知の記載内容は、きわめて戦略的な意味合いがあると指摘されています。 |
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