トピックス#
40: 建物賃貸借・更新拒絶の正当事由・耐震基準
H30.3.12
借家契約において、家主の解約申入れや契約の更新拒絶が認められるためには、@当事者双方の建物使用の必要性、A借家に関する従前の経過、B建物の利用状況、
C建物の現況、D財産上の給付をする旨の申出等を考慮して、建物の明渡しを求める正当な事由があると認められることが必要です(借地借家法28条)。
ところで、昭和56年6月1日に建築基準法令が改正され、新耐震基準が導入されました。これにより、新耐震基準を満たさない建物について、賃貸借の契約更新時期が到来した場合に、 耐震性能に不足があることが正当事由の判断にどのように影響するかが論じられるようになりました。とくに阪神大震災で多くの木造住宅が倒壊した結果、平成12年に木造建築物の耐震基準がより厳しくなり、 さらに平成18年には改正耐震改修促進法が施行されるなど、耐震問題への関心は高まる一方です。 更新拒絶の正当事由には当たらないとした判例(東京地判平成25年2月25日、東京地判平成25年12月24日)がある一方、更新拒絶の正当事由を肯定した裁判例もあります (東京地裁立川支判平成25年3月28日)。建替えの必要性・緊急性の観点から物件の現状を具体的に検討して判断し、その際、耐震診断の結果は建物倒壊の危険性の程度を判断する一つの基準と位置付けている、 といのが判例の趨勢といえます。 他方、借主として、安心して建物を利用するために耐震改修、修繕を家主に求めることができるかという問題もあります。これについては、新耐震基準を満たさない耐震性能の建物に関し、 「たとえ賃貸物に破損や障害が生じたとしても、その程度が賃借人の使用収益を妨げるものでない限り、賃貸人は修繕義務を負担するものではない。」として修繕義務を否定する判例が出されています (東京地判平成25年2月25日)。賃貸人の修繕義務は、賃借人をして賃借物をその用法に従って使用収益させるのに必要な限度で発生するという前提に立つものです。 |
|||||
| |||||
|