トピックス#
42: 交通事故・人身傷害(補償)保険
H30.3.12
人身傷害(補償)保険は、自動車保険として一般的な加害者側が加入する賠償責任保険とは異なり、被害者側の加入する傷害(補償)保険です。
自動車事故によって被保険者が死傷した場合に、被保険者の過失割合を考慮することなく、約款所定の基準により積算された損害額を基準にして保険金を支払うという点に特質があります。
従来、車両損害については、車両保険を付保することにより過失の有無を問わず、被保険者に対する補償が可能であるのに対し、より悲惨な人身損害については、自己過失等に起因する部分を填補する手段がなく、
均衡を失しているとされ、人身損害を補償すべく開発されたのが人身傷害(補償)保険といわれています。約款所定の基準による損害額(人傷基準損害額)は、民法上認められるべき裁判基準による損害額
(裁判基準損害額)よりは少額であるのが通例とされています。このため、人身傷害(補償)保険により支払われる保険金額が、裁判所が認定するであろう裁判基準損害額を下回り、かつ過失相殺が認められる場合に、
被保険者が保険金を受領した後に加害者に対して請求できる範囲、及び人身傷害(補償)保険会社が代位できる範囲が問題となります。この点、人身傷害補償保険が先行した事案について、最高裁判所は、
人身傷害補償保険金額が訴訟における被保険者の過失割合に対応する損害額を上回る場合のみ、人身傷害補償保険会社がその上回る部分を代位取得するとし、いわゆる裁判基準差額説を採用しました
(最判平成24年2月20日)。これを受け、多くの保険約款は、「判決または裁判上の和解の場合は、裁判基準損害額を人傷基準損害額とみなす」とする、いわゆる読替規定を設けています。
その結果、被害者は、過失があっても、過失相殺前の損害額(裁判基準損害額)を確保することができ、いずれの訴訟が先行するかにより取得する総額が異なることはなくなりました。
ただし、賠償先行で訴訟上の和解ないし訴訟外の示談により加害者から損害賠償を受領した後に訴訟で人傷保険金請求をした事例で、約款の限定解釈を否定した判例がありますので注意が必要です
(大阪高判平成24年6月7日、東京高判平成26年8月6日)。
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