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64: 預金債権の消滅時効
R02.5.15
消滅時効期間は、民法改正により、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年という規定に改められました(民法166条1項)。
前者を主観的起算点、後者を客観的起算点といいます。預金債権についても、この条文が適用されます。ひとくちに預金債権といっても当座預金、普通預金、定期預金という種別があります。
当座預金とは、金融機関の取引先が金融機関との間で当座勘定契約を結び、それに基づき手形・小切手の支払いを委託し、その支払資金を預入するものです。預金者は、 手形・小切手の振り出しによらなければ払戻しを請求できません。そのため、判例は、権利行使について障害がなくなるのは当座勘定契約の終了時と解しています。 よって、当座預金の消滅時効は、当座勘定契約が終了した時から進行し、短期5年の時効が適用されると考えられます。 普通預金については、預入後いつでも払戻請求が可能であり、それは周知の事実です。したがって、預入時に消滅時効の進行が開始され、通常は5年の短期時効が適用されると考えられます。 もっとも、普通預金は預入または払戻しが繰り返されることが通常であり、そのつど金融機関による権利の承認があったとして時効は更新されるものと解されます。そのため、 預金者が最後の預け入れまたは払戻しをした時から時効が進行し、その時効期間は5年になります。 一般の定期預金については、満期の到来により払戻しができますので、権利行使について障害がなくなるのは満期日です。よって、預金払戻請求権の消滅時効は満期日から進行し、 短期5年の時効が適用されると考えられます。自動継続特約付きの定期預金の払戻請求権の消滅時効については、判例により「それ以降自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行する」 (最判平成19年4月24日)と判示されているので、それ以降自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日から進行し、その時効期間は、短期5年が適用されるものと考えられます。 なお、仮に消滅時効が完成した場合であっても、時効を援用して払戻しを拒絶するか否かは金融機関の判断です。実務上は、金融機関に取引履歴が残っていたとすれば、消滅時効を援用することはなく、 払戻しに応じることが多いと思われます。 |
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