トピックス#
66: 働き方改革・年次有給休暇の時季指定義務
R02.7.12
近年の個別労働紛争の広がりと深刻化を背景として数多の裁判例が蓄積され、これに伴い法律・通達・ガイドライン等が整備されてきたため、
今や労働関係法の遵守が企業経営の成長戦略の最重要課題として位置づけられるようになりました。平成29年11月8日、経団連が策定した企業行動憲章においても、
「従業員の能力を高め、多様性、人格、個性を尊重する働き方を実現する。また、健康と安全に配慮した働きやすい職場環境を整備する。」とされています。
こうした時流の一環として、働き方改革が提唱され、働き方改革関連法が成立したものです。もっとも政府が策定した働き方改革実行計画は、@長時間労働の是正、A非正規雇用の待遇改善、 B柔軟な働き方がしやすい環境整備(テレワーク、副業・兼業)、C賃金引き上げと生産性向上、D病気の治療と仕事の両立、E子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労、F外国人材の受入れ、 G女性・若者が活躍しやすい環境整備、H転職・再就職支援、の9つの重要項目を掲げたのですが、働き方改革関連法において会社の具体的な義務を定める法改正がなされたのは@及びAだけです。 @に関係する時間外労働の上限規制及び年次有給休暇の時季指定義務条項の施行は、平成31年4月1日です。ただし、前者は中小企業に関しては令和2年4月1日施行であり、 60時間超時間外特別割増の中小企業への適用は令和5年4月1日とされています。 年次有給休暇に関しては、労働基準法改正により、すべての企業において年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、有給休暇の日数のうち5日については、 使用者が時季を指定して取得されることが義務づけられました(労基法39条7項)。これは、職場への配慮やためらい等の理由から、有給休暇の取得率が5割を下回る水準で推移している状況を改革するためです。 例えば入社日が令和2年4月1日の場合、10日の有給休暇が付与される基準日は令和2年10月1日になります。そのため、令和3年9月30日までに5日の有給休暇を取得させる義務を負います。 使用者は、時季指定に際しては、労働者の意見を聴取する義務を負い、また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう努めなければなりません(労規則24条の6第1項、2項)。 さらに使用者は、労働者ごとに有給休暇の時季、日数及び基準日を明らかにした「年次有給休暇管理簿」を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存する義務を負います(労規則24条の7)。 罰則規定も定められ、年5日の有給休暇を取得させなかった場合には30万円の罰金が科される恐れがあります(労基法120条、39条7項)。 また、労働者の請求する時季に所定の有給休暇を与えなかった場合には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるので注意が必要です(労基法119条、39条)。 |
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