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トピックス# 68: 死亡保険金受取人の変更と遺留分侵害
R03.1.10
 保険法は、保険金受取人の変更は保険者に対する通知を原則としつつ(43条2項)、遺言による変更も認めています(44条1項)。ただし、遺言による変更は、遺言が効力を生じた後、 保険契約者の相続人が保険者に対して変更の通知をしなければ保険者に対抗することができません(44条2項)。
 遺留分とは、被相続人の財産の中で、法律上その取得が一定の相続人に留保されていて、被相続人による自由な処分(遺贈・贈与等)に対して制限が加えられている持分的利益をいいます。 兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があり、直系尊属のみが相続人の場合の遺留分割合は1/3、それ以外の場合は1/2とされています。
 死亡保険金受取人の変更が遺留分侵害にならないか、というのがここでの問題です。保険金請求権は、保険契約者により指定された保険金受取人の固有の権利であり、 被保険者の財産に帰属したものが相続によって承継取得されるものではない、というのが確立された判例です(最判昭和40.2.2)。 さらに死亡保険金請求権は、保険契約者の払い込んだ保険料と等価の関係にあるものではないこと等から、実質的にも保険契約者又は被保険者の財産に属していたとはいえないとされ、 保険金受取人の指定は「遺贈」又は「贈与」に当たるとはいえないと解されています(最判平成14.11.5)。よって、死亡保険金受取人の変更は遺留分侵害にならないというのが原則です。
 しかしながら、その後最高裁は、死亡保険金請求権は民法903条1項に規定する「遺贈」又は「贈与」に当たらないとの従前の原則を踏襲しつつも、 保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合には、 例外的に同条の類推適用により、死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると判示しています(最決平成16.10.29)。そして、遺留分との関係でも、判例は、 上記特段の事情があるときには例外となることを認めています(東京地判平成23.4.21、東京地判平成23.8.19、東京地判平成26.3.28)。
 特段の事情の有無は、具体的な事案に応じて判断されますが、その考慮要素としては、保険金の額、保険金の額の遺産総額に占める割合、同居の有無、被相続人に対する介護等の貢献度、 被相続人と各相続人との関係性、各相続人の生活実態等の諸般の事情が上げられています。

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