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トピックス# 72: 給与の差押え
R03.8.7
 従業員の給与が当該従業員の債権者によって差し押さえられた場合の雇用主(会社)の対処法です。
 第1に問題となるのは、給与の差押えが可能な範囲についてです。従業員の生活保障の観点から、給与全額の差押えはできません。原則として、毎月の給与(基本給及び諸手当。ただし、通勤手当を除く。) から所得税、住民税、社会保険料を控除した残額の4分の1まで差押えが可能です(以下「差押可能給与額」といいます)。ただし、毎月の給与から所得税、住民税、社会保険料を控除した残額の4分の3に相当する額が、 標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額(毎月払の場合は33万円)を超える場合、すなわち、毎月の給与から所得税、住民税、社会保険料を控除した残額が44万円を超える場合には、 当該残額から33万円を控除した額が差押可能給与額となります。なお、債権者の従業員に対する債権が、養育費等の扶養義務に関する債権である場合には、残額の2分の1まで差押えが可能とされており、 差押可能給与額の範囲が拡張されています。
 第2に差押えの効力です。給与(賃金債権)を差し押さえる旨の債権差押命令が裁判所から第三債務者(会社ないし雇用主)に送達されると、第三債務者は債務者(従業員) への差押可能給与額の支払が禁止されます。仮に、裁判所から債権差押命令の送達を受けながら差押可能給与額を含む給与全額を支払ってしまった場合、債権者からの取立てに対しても支払う必要があり、 差押可能給与額を二重に支払うこととなります。したがって、会社としては差押可能給与額を計算し、当該金額については従業員に支払わないよう注意する必要があります。
 第3に陳述催告への対応です。債権差押命令の送達と一緒に、第三債務者(会社ないし雇用主)に対して、差押えの対象となる債権の存否等につき陳述するよう催告がなされます。 そして、陳述催告に対しては、債権差押命令の送達日から2種間以内に回答する必要があります。第三債務者が、故意または過失により陳述をしなかったとき、または不実の陳述をしたときは、 これによって生じた損害を賠償しなければなりません(民事執行法147条2項)。
 第4に、債権者による取立てへの対応です。債権者は、債権差押命令が送達された日(初日不算入)から4週間を経過したときは、給与の差押え分を第三債務者から直接取り立てることができます (ただし、請求債権が養育費等の扶養義務に関する債権である場合は、経過期間は4週間ではなく1週間となります。)。第三債務者が取立てに応じ、債権者に支払った場合は、 支払いを受けた限度で弁済されたものとみなされます。また、第三債務者は、債権者に直接支払うのではなく、法務局に供託することもできます(民事執行法156条1項。権利供託)。 複数の債権者による差押えが競合した場合には、必ず法務局に供託しなければなりません(民事執行法156条2項。義務供託)。

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