職業安定法は、職業紹介について、求人及び求職の申込を受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立を斡旋することをいう、と定義しています。
これには、ヘッドハンティングなどのスカウト行為や、余剰人員を抱える企業等の求めに応じ、転職先を探し斡旋するアウトプレースメント等も含まれます。ただし、
単に求人情報を提供するだけの求人情報誌や求人情報ウェブサイトは雇用契約の成立を斡旋するものとはいえず、職業紹介にはあたりません。
職業紹介事業を行う主体としては、国の職業安定機関(通称ハローワーク;公共職業安定所等)、厚生労働大臣に通知して無料の職業紹介事業を行う地方公共団体(特定地方公共団体)、
民間の職業紹介事業者があります。民間の職業紹介事業者には、さらに、厚生労働大臣の許可を受け有料職業紹介を行う者、厚生労働大臣に届け出て無料の職業紹介事業を行う学校等、
厚生労働大臣に届け出て無料の職業紹介事業を行う特別法により設立された一定の法人の3種類があります。
職業紹介事業者に共通するものとして、職業安定法は以下の基本ルールを定めています。
- 職業選択の自由・・求職者にある職業に就くことを強制するものであってはならないというルールです。
- 差別的取扱いの禁止・・人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、
職業紹介、職業指導等において差別的取扱いを受けることがあってはならないというルールです。職安法3条では差別禁止事由として年齢を上げていませんが、
募集・採用における年齢制限を原則禁止した労働施策総合推進法により、例外的に許容されている場合を除き禁止されています(同法9条)。ここで例外的に許容されている場合とは、
@定年年齢を下回ることを条件とする募集・採用、A法令により特定年齢の就業が禁止されている業務(例えば労基法63条)に関する当該年齢以外の労働者の募集・採用、
B長期勤続によるキャリア形成を図る目的でなされる特定年齢未満の労働者の募集・採用等です(労働施策総合推進法施行規則1条の3)。
- 労働条件等の明示・・求人者は職業紹介事業を行う者に対し、職業紹介事業を行う者は求職者に対し、従事すべき業務の内容、賃金、
労働時間その他の労働条件を厚生労働省令で定める方法により明示しなければならないというルールです。労働契約の締結過程に第三者が介在することで、
労働条件が不明確になることを防止する規定です。厚生労働省令で定める方法とは、書面の交付、または被交付者が希望する場合ファイル記録・
書面作成が可能な電子メールの送信の方法で明示しなければならないとされています。平成29年の職安法改正は、
職業紹介など求人の際に明示された労働条件と実際の労働条件とが異なる求人詐欺が社会問題となったことの対策として、職業紹介
(労働者募集・労働者供給)時に明示された労働条件を労働契約締結前に変更する場合(特定されていなかった内容を特定する場合や新たな条件を追加する場合を含む)に、
求人者(募集者・労働者供給を受ける者)に、労働契約が締結される前に求職者(労働者となろうとする者)に対して書面の交付、または被交付者が希望する場合ファイル記録・
書面作成が可能な電子メールの送信の方法によって変更事項を明示することを義務づけました。また、従来は、虚偽の広告・条件提示をして職業紹介等を行った者にのみ罰則が定められていましたが、
上記改正により、虚偽の条件を提示して職業紹介事業者に求人の申込を行った求人者についても罰則を定め、求人詐欺に厳正に対処できる体制が整えられました。
- その他、個人情報の保護、求人・求職受理の原則、適職紹介の原則、労働争議への不介入の原則等がルール化されています。