共有物の管理に関し、最高裁判所昭和41年5月19日判決は、共有物の持分の価格が過半数を超える者であっても、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、
当然には、その占有する共有物の明渡しを請求することができないとし、共有物の明渡しを求めることができるためには、その明渡しを求める理由を主張し立証しなければならないとしています。
ところが、改正民法252条1項前段は、共有物に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することを定めます。この規定は、現行民法252条1項本文と基本的に同じ内容ですが、
共有物の管理に関する事項の中に下記を含むとしている点が、現行民法と異なります。
- 共有物の管理者の選任・解任
- 共有物の変更のうち、その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの
また、改正民法252条1項後段は、共有物を使用する共有者があるときも、同様とすると定めていることから、共有物を使用する共有者がある場合における共有物の管理に関する事項についても、
改正民法251条1項の共有物の変更の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数に従って決することになります。従って、一部の共有者が共有物を使用する場合であっても、
その者の同意を得ることなく、共有物に関する事項を各共有者の持分の価格の過半数で決することができることになります。そして、
各共有者の持分の価格に従いその過半数で特定の共有者に共有物の全部を使用させるものと決せられた場合には、その共有者は、改正民法252条1項後段に基づき共有物の全部を使用することができるため、
共有物を他の共有者に無断で使用する共有者に対して、共有物の引渡しを求めることができることとなります。すなわち、改正民法252条1項後段の規律のもとでは、
この規律に従って共有物を独占的に使用する者を定めた場合には、上記最高裁判例のいう明渡しを求める理由があることになるのです。
ただし、改正民法252条3項により、同条1項による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければなりません。