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トピックス#
86: 家事・相続/民事信託・事業承継
R07.1.25
民事信託について法律上の定義はありませんが、家族信託(家族の財産の管理・処分等及び遺産の承継のために信託を用いるもの)と同義のものとして使用されたり、
家族の枠にとらわれない事業承継への信託活用を含めるものとして使われたり、投資信託などの商事信託との対比で用いられたりします。ある文献では「民事信託は、その原因となる経済行為は、
長期の財産管理制度と組み合わせられた贈与であり、主として財産の管理・承継のために利用される信託である」と定義されています。
民事信託が対象とする個人の財産管理や資産の承継、事業承継などの問題については、成年後見制度、遺言制度、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に基づく制度などが存在しています。 個人の財産管理において成年後見制度を利用する場合は、本人のための財産の保護が最優先される結果、近親者への贈与や、相続税負担を軽減するための措置などは原則として認められず、 リスクを伴う積極的資産運用も認められません。これらの行為も資産保有者が意思決定できる段階で判断し、受託者に委ねることは自由な財産権の行使ですから、あらかじめ本人が一定の財産を他人に委ね、 本人が財産管理能力を失ってからもその意思決定を実現していきたい場合があります。このような場合に民事信託は有効です。 次に資産保有者は、遺言によってその承継方法を定めることはできるものの、いったん承継させた相続人等から、さらにその次の段階の承継について遺言で定めることはできません。 いわゆる後継ぎ遺贈の問題です。この問題について信託を活用すると、第一次の承継者の受益権を当該承継人の死亡で消滅させ、新たに第二次の承継者に受益権を与えることによって、 あたかも第二次の資産承継についても当初の資産保有者が計画したような効果を得ることができます。信託法91条で、このような後継ぎ遺贈型受益者連続信託の有効性を前提とする規定を設けています。 この一類型として、障がいをもった子のための、いわゆる「親なき後」の対処があります。 事業承継について、中小企業経営承継円滑化法の制度を活用して遺留分の除外合意や固定合意の許可を得れば、相続開始前に円滑な事業承継の準備はできます。 しかし、これらの合意は経営者の推定相続人全員が加わらなければできないので、一人でも反対者がいれば活用できません。ところが、民事信託を活用し、株式を受託者に信託し、 推定相続人には受益権(株式からの経済的権利)を与えることとすれば、議決権の行使は受託者において統一的に行うことができ、安定的な経営承継が実現できる、とされています。 ![]() |
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